訪問介護のカスタマーハラスメント対策と記録|利用者・家族宅という現場ならではの備え

訪問介護員は、利用者・家族の自宅という「事業所の外」で、一人で援助を行う場面が多くあります。同僚や上司の目が届きにくい環境だからこそ、カスタマーハラスメントへの備えと、起きたことを正確に残す記録の仕組みが重要になります。

カスタマーハラスメントとは

カスタマーハラスメントとは、利用者やその家族等から、著しい迷惑行為(暴言、威圧的な言動、過大な要求、身体的な攻撃など)を受け、職員の就業環境が害される状態を指します。労働施策総合推進法の改正により、令和8年10月1日から、事業主にはカスタマーハラスメント対策として雇用管理上の措置義務が課されることになります(施行予定)。具体的な措置の内容・要件の詳細は、厚生労働省の公表資料・最新のガイドラインをご確認ください。

措置義務の考え方(相談体制・事実確認・対応方針)

一般に、事業主に求められる対応の考え方としては、次のような柱が挙げられます。具体的な整備内容・様式は事業所の方針・最新の公表情報によります。

  • 相談体制の整備:職員が一人で抱え込まず、事業所に相談できる窓口・連絡手段を明確にする。
  • 事実確認の仕組み:何があったかを、職員から具体的に聞き取り、記録に残す。
  • 対応方針の明確化:ハラスメントが疑われる場合の初期対応(訪問の一時見合わせ、複数名対応への切り替えなど)を、あらかじめ職員に周知しておく。
  • 再発防止:同一利用者・同一世帯での再発がないか、記録を蓄積して確認する。

訪問介護ならではの備えの視点

  • 一人体制のリスク:訪問時は基本的に職員一人での対応となるため、緊急時にすぐ連絡できる手段(携帯電話、緊急連絡先の周知)を確保しておく。
  • 複数名対応への切り替え基準:過去に迷惑行為があった利用者・世帯には、次回以降は複数名で訪問する、同性職員を配置するなど、事業所としての対応基準をあらかじめ決めておく。
  • 利用者票への留意事項の記載:ハラスメントのリスクがある場合、担当者間で共有できるよう、留意事項として記録・引き継ぐ。
  • ケアマネジャーとの連携:利用者・家族との関係調整が必要な場合は、ケアマネジャーにも状況を共有し、チームで対応を検討する。

記録に残しておきたい項目

  • 発生日時・場所(訪問中のどの場面か)。
  • 行為の内容(発言・行動を、伝聞・推測と区別して具体的に)。
  • その場での対応(訪問の継続・中断、誰にどう連絡したか)。
  • 事業所としてのその後の対応(複数名対応への切り替え、利用者・家族への申し入れの有無など)。

記録例(訪問中の言動に関する記録)

訪問中、家族より大声での威圧的な言動があり、職員が不安を感じたため、その場で事業所へ電話連絡し状況を報告した。管理者と相談のうえ、次回訪問からは複数名での対応に切り替えることとし、担当ケアマネジャーへも状況を共有した。

よくあるNGと、その直し方

  • 「不快な言動があった」とだけ記録する:具体的にどのような発言・行動があったかを記載しないと、事業所が次の対応(複数名対応の要否など)を判断できない。
  • 職員が一人で抱え込み、事業所に共有しない:起きたことは些細に見えても、まず事業所へ報告する流れを職員間で徹底する。
  • 同一利用者で繰り返し発生しているのに、都度単発の出来事として記録する:過去の記録と紐づけて蓄積し、対応基準の見直し(複数名対応への切り替え等)につなげる。

よくある質問

カスタマーハラスメント対策は、いつから義務化されますか?

労働施策総合推進法の改正により、令和8年10月1日から、事業主にカスタマーハラスメント対策(雇用管理上の措置義務)が課されることになります(施行予定・本記事執筆時点では未施行)。具体的な措置の内容・詳細な要件は、厚生労働省の公表資料・最新のガイドラインをご確認ください。

利用者・家族からの言動は、すべてカスタマーハラスメントに該当しますか?

いいえ。認知症等の症状に起因する言動など、ハラスメントとして一律に扱うべきでないケースもあります。何が該当するかの判断は個別性が高く、事業所内での事実確認・状況の整理を踏まえて検討することが基本です。

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