訪問介護の苦情受付と対応記録の書き方|何を、どこまで、誰に残すか

「ご家族から苦情を言われた。何を、どこまで、誰に残せばいいのだろう」──サービス提供責任者が現場で直面する場面です。受けた→記録した→事業所内で共有した→必要であれば市町村や国民健康保険団体連合会が関わる、という流れに沿って、押さえておきたいポイントを整理します。

カスタマーハラスメントとの違い(まず区別する)

苦情とカスタマーハラスメントは、混同しやすいものの、制度上は別の枠組みです。苦情は、サービス内容や職員の対応について利用者・ご家族から寄せられる「改善を求める申し出」であり、事業者には迅速かつ適切に対応する義務があります。一方、カスタマーハラスメントは、著しい迷惑行為によって職員の就業環境が害される状態を指し、職員を守るための労務管理上の対応が中心になります。

運営基準が定めていること(第三十六条・全6項)

訪問介護の苦情処理は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号/現行版=2025年4月1日施行・2024年12月27日最終改正)第三十六条に、訪問介護章の固有の義務として定められています。実務の言葉に置き換えると、次の流れになります。

  1. 苦情に迅速かつ適切に対応するため、苦情を受け付ける窓口を設置する等の必要な措置を講じる(第1項)。
  2. 受け付けた苦情は、内容等を記録する(第2項)──本記事で最も詳しく扱う部分です。
  3. 市町村から文書等の提出・提示を求められたり、職員が質問・照会を受けたりした場合は応じる。利用者からの苦情に関して市町村が行う調査にも協力し、指導・助言を受けたときはそれに従って必要な改善を行う(第3項)。
  4. 市町村から求めがあれば、改善の内容を市町村へ報告する(第4項)。
  5. 利用者からの苦情に関して国民健康保険団体連合会(国保連)が行う調査にも協力し、指導・助言を受けたときは同様に改善する(第5項)。
  6. 国保連から求めがあれば、改善の内容を国保連へ報告する(第6項)。

受付時に残しておきたい記録の項目(実務の型)

第2項が求めるのは「内容等を記録すること」ですが、後から経緯を説明できるようにするには、次のような項目を残しておくと実務上役立ちます。

  • 受け付けた日時(いつ、どのような方法で申し出を受けたか)。
  • 申出者と利用者の関係(利用者本人・ご家族・ケアマネジャー・その他関係者のいずれか)。
  • 申し出の内容(事実として確認できたことを具体的に。推測・意見とは分けて書く)。
  • その場での対応(誰が、どのように初期対応したか)。
  • 事業所としての対応と結果(確認・検討の経過、申出者への説明内容)。
  • 再発防止のために変えたこと(対応基準の見直し、職員間での共有など。変更がなければ「現状維持」と記録する)。

記録例(サービス内容に関する申し出)

ご家族より電話にて、訪問時間が予定より短く感じるとのお申し出があった。当日の訪問記録・サービス提供時間を確認したところ、記録上は契約どおりの時間で実施していた。申出者へ確認結果を説明し、体感時間とのずれについてはケアプランに沿った内容を再度ご案内した。管理者・担当ケアマネジャーへも申し出の内容と対応結果を共有した。

市町村・国民健康保険団体連合会が関わる場面(3〜6項の実務の順序)

寄せられる苦情の多くは、事業所内での確認・説明で完結します。市町村や国保連が関わるのは、利用者・ご家族が直接そちらへ申し出た場合など、限られた場面です。その場合の実務の順序は次のとおりです。

  1. 市町村(または国保連)から、文書の提出・提示や質問・照会があれば、事実関係を整理して応じる。
  2. 利用者からの苦情に関して市町村(または国保連)が行う調査には協力する。
  3. 調査の結果、指導・助言を受けた場合は、その内容に従って必要な改善を行う。
  4. 市町村(または国保連)から求めがあれば、改善した内容を報告する。

事業所内で共有する(抱え込まない)

苦情を受け付けた職員が一人で抱え込まず、まず管理者・サービス提供責任者へ共有する流れを徹底します。内容によっては、居宅サービス計画に関わることとしてケアマネジャーへの共有が必要になる場合もあります。事業所内のカンファレンスやケース検討会議で扱う場合の議事録の残し方は、別記事「訪問介護事業所の会議記録(議事録)の書き方」で解説しています。ご家族への説明そのものの書き方は、別記事「訪問介護の家族向け説明メモの書き方」もあわせてご覧ください。

よくあるNGと、その直し方

  • 対応の結論だけを書き、経過が分からない:受付から対応・結果までを時系列で残すと、後日の確認や引き継ぎがしやすくなる。
  • 事実と職員の推測・意見を分けずに書く:「〜と思われる」ではなく、確認できた事実を先に書き、意見・所感は分けて記載する。
  • 苦情かカスタマーハラスメントかを整理しないまま記録する:まず苦情として受け止め、著しい迷惑行為に該当する要素があれば、別途カスタマーハラスメントとしての対応もあわせて検討する。
  • 受け付けた職員だけで抱え込み、事業所に共有しない:軽微に見える申し出でも、まず管理者へ報告する流れを徹底する。

よくある質問

苦情とカスタマーハラスメントは、どう違いますか?

苦情は、サービス内容や職員の対応について利用者・ご家族から寄せられる改善を求める申し出で、事業者には運営基準(第三十六条)に基づき迅速かつ適切に対応する義務があります。カスタマーハラスメントは、著しい迷惑行為によって職員の就業環境が害される状態を指し、労働施策総合推進法の改正による別の枠組み(令和8年10月1日施行)で、職員を守るための労務管理上の対応が中心になります。

施行期日は、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和8年政令第17号)により定められています。厚生労働省の公式ページで2026年9月23日に確認しました。

苦情の記録には、具体的に何を書けばよいですか?

運営基準第三十六条第2項が求めるのは「内容等を記録すること」で、記録項目そのものは条文に列挙されていません。実務上は、受け付けた日時、申出者と利用者の関係、申し出の内容、その場での対応、事業所としての対応と結果、再発防止のために変えたことを残しておくと、後から経緯を説明しやすくなります。

すべての苦情が市町村や国民健康保険団体連合会に伝わりますか?

いいえ。寄せられる苦情の多くは事業所内での確認・説明で完結します。市町村や国保連が関わるのは、利用者・ご家族が直接そちらへ申し出た場合など、限られた場面です。その場合は、市町村・国保連の調査への協力、指導・助言に従った改善、求めに応じた報告という流れになります。

受け付けた苦情を、記録の下書きに

受付方法・申出者・内容の区分・対応の経過・現在の状況を選ぶと、事業所内の記録・共有に使う下書きが生成されます。日時や具体的な事実は、実際の記録に基づき必ず加筆・修正してください。

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